介護事業の市場と、未来。
需要は増えているのに、続けられない。単価は公定で上げられず、人は集まらず、廃業は過去最多。介護事業を取り巻く市場の現実を、一次資料の数字だけで整理しました。そのうえで、介護事業者だからこそ持てる次の柱について。
介護事業者の倒産は、過去最多
2024年の介護事業者の倒産は172件(前年比+40.9%)で過去最多。なかでも訪問介護は倒産81件、休廃業・解散448件で、合わせて529件が市場から消えました。原因の最多は「販売不振(利用者の獲得遅れ)」です。
出典:東京商工リサーチ「2024年「介護事業者」倒産が過去最多の172件」「2024年「老人福祉・介護事業」の倒産、休廃業・解散調査」(2025年1月)
同じ「家に行く1回」で、単価は約2倍違う
介護も看護も、価格は国が決める公定価格です。自分で値上げはできません。だからどのサービスを提供するかが、そのまま1回あたりの売上を決めます。
| サービス | 区分 | 1回あたり(目安) | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 訪問介護(介護保険) | 身体介護 20分以上30分未満 | 約2,440円(244単位) | 厚生労働省 令和6年度介護報酬改定 単位数表 |
| 訪問看護(介護保険) | 訪問看護ステーション 30分未満 | 約4,710円(471単位) | 同上 |
| 訪問看護(医療保険) | 訪問看護基本療養費(I)1日につき | 5,550円+各加算 | 厚生労働省 令和6年度診療報酬改定 |
※1単位=10円で概算。地域区分・加算・時間区分により変動します。トータルケアの実績では訪問単価は1万円前後(医療保険61%・介護保険39%の構成)。
報酬改定の向きも違う
令和6年度の介護報酬改定では、訪問介護の基本報酬が引き下げられました。処遇改善加算で補う設計ですが、基本単価が下がる方向にある事業と、24時間対応や医療依存度の高さが評価される事業では、経営の伸びしろが違います。
出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の主な事項」
積み上がり方が違う
訪問看護は1日4〜5件で月100件前後を1人が担い、24時間365日対応にすると単価の高い医療保険の患者を受けられます。同じ人数でも、運営モデルで月商が変わる事業です。
「人を集めれば伸びる」が、成り立たない市場
15.53倍
訪問介護の有効求人倍率
2022年度、過去最高。1人の求職者を15の事業所が奪い合う状態です。
出典:厚生労働省(社会保障審議会 介護給付費分科会 資料)
+57万人
2040年度に必要な介護職員の増加分
必要数は約272万人。2022年度から約57万人(年3.2万人)増やし続けなければ足りません。生産年齢人口は同じ期間に減り続けます。
出典:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」(2024年7月)
7,000万人割れ
働き手そのものが減る
生産年齢人口は2032年に7,000万人を割る推計。介護も看護も採用難は続きます。だからこそ「採用と定着の仕組み」を持つ本部と組む意味があります。
出典:国立社会保障・人口問題研究所(令和5年推計)
すでに持っているものが、訪問看護でそのまま生きる
単価が高く、需要が増え、国の評価の向きも追い風の訪問看護は、介護事業者にとっていちばん近い次の柱です。ゼロからではありません。
既存の利用者と、ケアマネジャーとの関係
訪問看護の依頼はケアマネジャーと病院から来ます。すでに連携しているケアマネジャー、すでに支えている利用者が、そのまま最初の患者につながります。
指定申請・実地指導・請求の経験
介護保険制度のなかで運営してきた経験は、訪問看護の指定申請・国保連請求・運営基準にそのまま活きます。
拠点・車両・シフト運営
事業所は数坪で足り、既存拠点の一角に併設できます。訪問の運営、車両、シフト管理のノウハウはそのまま使えます。
医療依存度の高い利用者を、断らなくてよくなる
介護だけでは支えきれなかった医療的ケアが必要な利用者を、自社の訪問看護で受けられます。利用者を他社に渡さず、単価の高いサービスで支え続ける。それが介護事業者が訪問看護を持つ意味です。
介護事業者の新規事業としての進め方は介護事業者の新規事業として、採用と定着の仕組みは看護師の採用と定着へ。
このページの一次資料
- 東京商工リサーチ「2024年「介護事業者」倒産が過去最多の172件」「2024年「老人福祉・介護事業」の倒産、休廃業・解散調査」(2025年1月)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の主な事項」「介護給付費単位数表」(2024年)
- 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定」訪問看護基本療養費(2024年)
- 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」(2024年7月)
- 厚生労働省 社会保障審議会 介護給付費分科会 資料(訪問介護員の有効求人倍率、2022年度)
- 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」