開業の基礎知識

訪問看護ステーションを、開業するには。

「訪問看護をやってみたい」と思ったとき、最初に知りたいのは何が必要で、どれくらいかかり、何につまずくのかだと思います。このページは、その3つに正面から答えるために作りました。加盟の勧誘ではなく、まず全体像を持っていただくための解説です。

必要なもの

開業に必要な5つ

どの事業者が開業する場合でも、この5つは共通して必要になります。

  • ① 法人格

    訪問看護ステーションの指定を受けるには法人であることが前提です。個人事業では指定を受けられません。株式会社・合同会社・NPO法人などの形態は問われないのが一般的です。

    ※ 法人の種類や定款の事業目的の書き方は自治体で確認が必要です。

  • ② 看護職員(人員基準)

    看護職員を常勤換算で2.5人以上配置し、そのうち1名は常勤の管理者(保健師または看護師)である必要があります。ここが最大の関門です。

    出典:厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」。詳細は人員基準・指定申請の要件へ。

  • ③ 指定申請

    都道府県(または指定都市・中核市)へ指定申請を行います。申請の締切は毎月あり、指定は翌月または翌々月1日付となるのが一般的で、書類の不備は開業日そのものを1ヶ月遅らせます。

    ※ 締切日・必要書類・事前協議の有無は自治体ごとに異なります。必ず所管の窓口でご確認ください。

  • ④ 事務所(物件)

    専用の区画が必要で、事務スペースのほか、感染予防に配慮した設備や、記録・書類を適切に保管できることが求められます。自宅の一室を使えるかは自治体の判断が分かれます。

  • ⑤ 移動手段・備品

    訪問のための車両(軽自動車が中心)、パソコン、記録システム、医療材料などが必要です。訪問エリアの地形や駐車事情によって必要台数が変わります。

期間

思い立ってから開業まで、どれくらいか

準備の中身は「書類」と「人」に大きく分かれます。書類は段取りで短縮できますが、人(看護師の採用)は短縮できません。ここを甘く見た計画がいちばん崩れます。

  1. 〜6ヶ月前

    構想と事業計画

    エリアの選定、収支の見立て、資金の準備。訪問看護は売上の7〜9割が医療保険・介護保険という構造のため、需要の読み方が一般的な業種と異なります。

  2. 〜4ヶ月前

    法人と物件

    法人設立(未設立の場合)、物件の選定・契約。指定申請には物件が確定している必要があります。

  3. 〜3ヶ月前

    看護師の採用開始

    ここが本番です。常勤換算2.5人を、開業日に揃っている状態にしなければなりません。募集して即決まる職種ではありません。

  4. 〜2ヶ月前

    指定申請

    申請書類の作成と提出。人員の要件を満たす証明(資格証・雇用契約)が必要なため、採用が遅れると申請も遅れます。

  5. 〜1ヶ月前

    地域へのご挨拶

    病院の退院支援部門、居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)、診療所へのご挨拶。依頼はここから来ます。開業してから始めるのでは遅すぎます。

  6. 開業

    指定日から算定開始

    ただし利用者がすぐに集まるわけではなく、立ち上がりの期間があります。ここを見込んだ資金計画が必要です。

つまずきどころ

実際につまずくのは、この3つ

制度の要件は調べれば分かります。分かりにくいのは、その先にある運営の壁です。

  • 1. 看護師が採用できない

    訪問看護は、就業看護師のうちわずか6.6%しか従事していない領域です。母集団が小さく、しかも同じ人材を全国のステーションが取り合っています。「開業してから採用」では指定要件を満たせません。

    出典:FC資料202604(厚生労働省統計に基づく)。採用の考え方はサポート内容へ。

  • 2. 依頼が来ない

    訪問看護の依頼は、病院の退院支援部門とケアマネジャーから来ます。この関係づくりは開業前から始める必要があり、一度信頼を失うと回復に時間がかかります。

  • 3. 24時間対応の負担

    緊急時訪問看護加算などを算定するには24時間の連絡体制が必要です。少人数のうちは管理者に負担が集中し、これが離職や燃え尽きの原因になります。

選択肢

自力で始めるか、フランチャイズで始めるか

どちらが正しいということはありません。何を自分で引き受けたいかで決まります。

  • 自力で始める

    費用を本部に払う必要がなく、運営の自由度が高い。一方で、採用・請求・システム・24時間対応の仕組みをすべて自分で作ることになります。医療・介護の経験が十分にある方には現実的な選択です。

  • フランチャイズで始める

    採用の仕組み、記録・請求のシステム、24時間の相談体制などを最初から使える一方、加盟金・ロイヤリティなどの費用と、運営ルールの制約があります。異業種からの参入では現実的な選択肢になります。

    本部の比べ方は選び方ガイド(7つの観点と、向かないケースの正直な開示)へ。

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